鉱物物理学に基づいた地震波速度構造の解読

波形インバージョンから推定した地震波速度構造を鉱物物理学に基づいて解釈し、20年来続いていた最下部マントルの大規模不均質構造の謎を解くと共に、核・マントル境界の温度をこれまでの見積もりよりも正確に3500℃と推定し、地球の熱史の理解に貢献しました (Kawai & Tsuchiya 2009)。
現在の地震波モデリングは地震波速度および密度が入力値として用いられていますが、鉱物物理学の進展からマントルの主要構成鉱物の弾性定数のデータが求まるようになってきました (Tsuchiya et al. 2016)。たとえば、最下部マントルの主要構成鉱物のペロブスカイトおよびポストペロブスカイトの超高圧超高温の弾性定数および密度の値を用いて、最下部マントルで予想される地温勾配に対応する速度プロファイルを元に地震理論波形を計算したところ、S波に見かけの異方性が生じることがわかりました(Borgeaud et al. 2016)。さらに今後は、鉱物の量比や選択配向などを入力値として鉱物物理学に基づいた地震波のモデリングをすることを目指しています。

参考文献