ナノとミクロンスケールの摩擦の科学

地震は破壊を伴う地下の断層の滑りによって引き起こされます。その発生機構の理解には断層を構成する鉱物組成や流体の分布の情報が必要です。そこで、巨視的な断層面でのすべり特性は構成鉱物の摩擦特性及び弾性特性に支配されているという仮説ももとに、鉱物の摩擦の性質を物質科学の理論及び実験両面から地下の断層面で発生する地震の理解をすすめます。

現在は地質調査や掘削の研究によって示唆されている断層面の主要な構成鉱物である層状珪酸塩を対象にして研究を行っています。理論的な研究としては、その摩擦特性を密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算によって真の接触面における垂直応力と剪断応力の関係、つまりナノスケールの摩擦特性、を調べています。実験的な研究としては、化学組成や鉱物種の異なる試料に対して、2軸圧縮摩擦試験機を用いた擬似断層面での摩擦係数や回収試料の顕微鏡観察からミクロンスケールの摩擦特性を調べています(Kawai et al. 2015)。それらの結果をもとにナノスケールとミクロンスケールの摩擦特性を結びつける新しい物理法則の解明に挑んでいます。

これは物材研の佐久間博博士と広島大学の片山郁夫教授との共同研究です。

参考文献