広帯域地震観測のための野外調査

地球内部構造をより詳細に調べるためには、蓄積された観測地震波形から最大限情報を引き出すための手法開発が大事です。ところが、震源と観測点分布は偏っているので、地球進化の理解のために重要なのに解像度に乏しい領域がどうしても存在します。そのような領域を調査するためには、新たに地震計を設置して地震波の観測を行う必要があります。そこで、私たちは自ら地震計を設置して、観測された地震波形の解析を行っています。

文部科学省科研費「新学術領域研究(研究領域提案型)」に「核-マントルの相互作用と共進化~統合的地球深部科学の創成~」(研究代表者:土屋卓久)(15H05826)物理観測項目の核―マントルの地震・電磁気観測班(A03-1) (研究代表者:田中聡)は、特に最下部マントルの微細構造を推定するために、太平洋下の巨大S波低速度領域の境界部分を取り囲み、外核・内核の研究にも適した仮想的な巨大観測網の構築を目指して、地震観測の空白域であるタイにおいて約100 km間隔の広帯域地震観測網(Thai Seismic ARray: TSAR)を展開しました。観測点網は南北および東西に幅広く設置できるため、震央距離や方位のレンジが大きい観測が可能になり、地球内部構造の高い解像度が期待されます。東京大学地震研究所および海半球観測研究センターが保有する広帯域地震計 40 セットを利用しています。タイのマヒドン大学のSiripunvaraporn准教授とその研究室メンバーと連携し、2016年度から2018年度にかけて40観測点の運用しています。2015年度は観測点決定のための予備調査(1期:11月, 2期:12月, 3期:1月)、2016年度は40点の観測点を設置しました。2017年度以降は、データの回収および解析を行いました。

参考文献