地学 VR 巡検教材の開発

VR Teaching Material

効率的な野外巡検のためには予習、実習、復習の三段階が重要です。これまで、地質図、現場の写真、古くはスケッチをもとに巡検の準備及び調査の予習が行われてきました。地質図を読み取ることは、地質図の表記の理解が前提であり、人による記載方法の違いもあり、初学者には困難でした。また、現場の写真やスケッチによって、ある程度現場を想像することできますが、現場に着いてその地質にすぐに直感的に現実と結びつけることは専門家でも難しいことがあります。そのため、初等教育および大学の教養課程レベルにおいて地質学の野外実習を実施するには教える側および教わる側双方に敷居が高くなってしまっています。その結果、初等教育では地学というと暗記重視の科目となってしまい、実習というとせいぜい石の観察などにとどまり、科目が開設されていない場合すらあります。地球科学の醍醐味は実際にものを見てさわるといった観察および体験の実習にあり、そのことによって理解の度合いが全く異なります。そこで、地球科学の普及およびリテラシーの向上のために野外実習を気軽に行うことができる教材の開発が必要であると考えました。

予習および準備において、地質図および写真またはスケッチが用いられます。それらに含まれる重要な要素は、俯瞰的な視野および実習と同じ視点からの視野です。それらの視点を最新のIT技術を用いて補うことで、より直感的な予習を行うことを可能になります。また、時間および空間的な制約で実習を行うことができない場合もあるかもしれません。その場合であっても、ITの技術を用いたVR巡検は役に立つでしょう。いずれの場合であっても障壁はハードおよびソフトの維持および数の確保です。ソフトはクラウド処理を行い、アップデートを自動で行う方がよいでしょう。そのために、汎用性の高いインターフェースを用いてソフトウェアを開発し、ウェブブラウザ上で利用できるようにします。汎用のスマホ、タブレット、PCなどを利用することを想定し、実際の教育現場における障壁を低くしたいと考えています。

これは(株)ライブアースの庄司真史氏および岡山理科大学の佐藤友彦准教授との共同研究です。

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参考文献
  • 庄司真史, 小林佑介, 河合研志, 佐藤友彦, 視点の水平移動可能なBYOD型地学VR巡検教材の開発, Development of BYOD-style horizontally movable virtual reality field trip tool for Earth science education, 地学教育, 印刷中 2021